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リスクを考えるより、できる範囲で動き出し継続することが何よりも大切

キッカケインタビュー

2023.08.02

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管理栄養士になるため大学に進学するも、バックパッカーに憧れ在学期間中はアルバイトをしながら1人で海外を訪れる。大学卒業後は働いてお金を貯め、卒業から3年後に夫婦でHUGSY DOUGHNUTをオープン。お店のコンセプトである「あそぼう」を体現するようにさまざまな挑戦を続ける松川さんに、お話を伺いました。

「ヒトはキッカケがあれば必ず変われる」生き方・働き方を応援するキッカケインタビュー。
第10回目の今回は、HUGSY DOUGHNUTの松川 寛紀さんにお話を伺いました。

管理栄養士になるため大学に進学したものの、バックパッカーに憧れ在学期間中はアルバイトをしながら1人で海外を訪れていた松川さん。大学卒業後は働いてお金を貯め、卒業3年後に夫婦でHUGSY DOUGHNUTをオープンしました。東京都多摩市の聖蹟桜ヶ丘駅から徒歩7分の場所にある古民家で土日祝日に営業する傍ら、三輪車での移動販売や全国の催事への参加、海外での出店などを幅広く行っています。松川さん自身の経験とともに、お店を持ちたいと考えている方へのメッセージを語っていただきました。
松川 寛紀さん

松川 寛紀さん

HUGSY DOUGHNUT
管理栄養士になるため大学に進学したものの、バックパッカーに憧れ在学期間中はアルバイトをしながら1人で海外を訪れる。大学卒業後は働いてお金を貯め、卒業3年後に夫婦でHUGSY DOUGHNUTをオープン。東京都多摩市の聖蹟桜ヶ丘駅から徒歩7分の場所にある古民家で土日祝日に営業する傍ら、三輪車での移動販売や全国の催事への参加、海外での出店などを行う。

バックパッカーとして海外を訪れる日々から、ただ時間が過ぎていく日々に

千葉祐大(以下 千葉)

松川さん、本日はよろしくお願いします。まずは、HUGSY DOUGHNUTを始めるまでの経緯をざっくりとお話しいただけますか?

松川寛紀さん(以下 松川さん)

よろしくお願いいたします。僕は食で人を幸せにしたい、健康にしたいという意識が高かったので、東京農業大学の栄養科学科に進学しました。その一方で、高校時代に読んだ本の影響でバックパッカーにも憧れていたんです。結局、ほとんど大学には行かずにアルバイトをして、お金を貯めては海外に行く生活をしていました。そのなかでいろいろな出会いがあり、仲間を集めて何人かで小さなお店を持つようなイベントを行っていて、いずれは仕事にしたいと考えていたんです。

大学を卒業してからはしばらく就職せずフラフラしていましたが、お金がないとお店は持てないのでがむしゃらに働きました。そして大学を卒業してから3年後に、妻と2人でお店を開いたんです。はじめは働きながら土日だけ営業していてお客様も誰も来ませんでしたが、少しずつ認知していただいてお店を盛り上げてきました。

HUGSY DOUGHNUTは、基本妻がドーナツを作って僕が売るという役割分担です。美味しいのはもちろんですが、見た目がおもしろいなど注目できるようなドーナツ作りをしています。「あそぼう」をコンセプトにしたドーナツ屋で、やってみたいことにどんどん挑戦しているのが特徴ですね。今は子どもも2人できて、金土日祝で開店しながら全国の催事やマルシェなどに参加したり、たまに海外でドーナツを販売したりしています。

千葉

ありがとうございます。すでに深掘りしたいエピソードでいっぱいですね。大学卒業後は就職されなかったとのことですが、就職活動もされなかったのでしょうか?

松川さん

実は、1社だけ受けたんです。鎌倉に本社があり遊び心が見られる会社に興味があって、そこだけは受けました。そうしたら3次面接で「君はサラリーマンに向いていないよ」と言われてしまって。1番働きたいと思ったところで向いていないと言われたらもうサラリーマンは諦めるしかないと考えて、その後は就活もしませんでした。なあなあで済ますのではなく、きちんと向いていないという言葉をかけてくれたので、とてもありがたかったですね。

千葉

なるほど。大学卒業後の働いていない期間は、何をして過ごされていたのでしょうか?

松川さん

就職活動を辞めてから、頭の中がぐちゃぐちゃになってしまったんです。思考停止してしまい、将来やりたいことに向けて何をどうすればいいのかわからず、ただ時間だけが過ぎていきました。荒波に抗えず流されているうちに、大学卒業の3月を迎えましたね。

卒業式にも出席せずどうしようか考えているうちに、何もしないなら家を出るよう親に言われました。荷物をまとめて家を出て公園で過ごそうとしていたら、当時彼女だった妻の実家に居候させてもらうようになったんです。

千葉

サラッとお話しされていますが、かなり濃いエピソードですよね。

松川さん

そうですね(笑)。100円マックで1日凌いで、マクドナルドでパソコンを広げてどうしようと考えていました。考えても堂々巡りで、お金も未来も自分の家もない。大学の同期は就職して仕事が始まっていたのに、僕は何もなくただ時間が過ぎていった。よく生きていたと思います。

お店を持つ夢に向けて動き出し、妻と2人で計画的に貯金

千葉

堂々巡りの日々を終え、お店を出すために動き始めたのは何がきっかけだったのでしょうか?

松川さん

お金がないから、とりあえず働こうと思ったんですよね。駅前のビラ配りのような日雇いのアルバイトを始めて、生活費を稼ぐことにしました。アルバイト雑誌を端から端までチェックして、受けられるところは全部受けましたね。

でも、やっぱり日雇いで1日5,000〜8,000円稼ぐだけでは埒が明かないと考え、今度はフルコミットの営業を始めたんです。訪問営業で契約が取れなければ給料は0円になるけれど、契約が取れたら月何十万円も稼げるということで、ほぼ毎日戦いのように稼働していました。生きていくには営業ができるようにならなきゃいけないと考えていたので、やってやろうと決意したんです。そして、3か月でそこの会社で1番売上を立てられるようになりました。

月に40万〜50万円稼げるようになりましたが、同時にストレスもかかっていました。そのとき、お金を稼げても心がすり減るようではいけないと感じたんです。そこで、当時好きだった表参道にあるカフェで2〜3年働き、お金を貯めました。

千葉

ご夫婦でお店を開かれたということは、奥様と一緒にお金を貯めていったのでしょうか?

松川さん

そうですね。当時彼女だった妻と2人で3年後のこの日に開業しようと決め、通帳を作り毎月お金を入れていました。

千葉

きちんと目標を共有し期限を決めて実行するのは、とてもいいアクションですね。

松川さん

妻は本当にそういうのが上手で、ゴールを決めて貯金するのも妻の発案です。それがなかったら僕は多分、起業しなかったと思います。期限を決めて具体的なゴールを設定しない限り、動き出せないと思いますね。

今も2人でドーナツ屋を営んでいますが、僕1人じゃ何もできなかったと思います。妻とは性格もキャラも違いますが、2人だからお店ができている。目標を設定しても、自分1人だとなあなあにしてしまうじゃないですか。でも2人で決めたからお互いに貯金額を確認していたし、支え合うことができました。日々喧喧諤諤で喧嘩していますが、2人でお店を始められてよかったと思います。

僕は何かするとき誰かと一緒のことが多いんですが、お互い支え合えたり高め合えたりできる仲間がいるといいですよね。

スモールスタートからブラッシュアップし、お客様が増えていった

千葉

ゴールを決めてお金が貯まり、いざ開業をされてからのエピソードをお聞かせください。

松川さん

来ていただいたことがある方はわかると思いますが、HUGSY DOUGHNUTは住宅と住宅の奥地にある小さな古民家を改装した店舗です。目立たない場所にあるし最初はお店だけでは生活できないだろうと思ったので、平日は普通に働いて土日だけお店を開くスモールスタートをしました。生活のすべてをお店に費やさず、楽しめる範囲で始めたんです。

はじめはお客様も全然来ませんでしたが、自分たちのお店ができて夢が叶ったという興奮に満ち溢れていましたね。お客様が来なくてもワクワクしてドーナツを作り、お店を少し改装したり友達に電話して遊びに来てよと誘ったりしました。

生活のすべてをかけて、夢がつまらなくなるのは嫌だったんですよね。別のところで生活費を稼ぎつつ、夢を少しずつ叶えてブラッシュアップしていく。最初はお店なのか家なのかわからないような環境のなかで、どうすれば自分たちが理想とするお店になるか模索しながら、お金をかけずに自分たちで手を動かしていきました。TwitterやInstagramなどのSNSやホームページも自分たちで勉強して、少しずつ発信していったんです。

小さなお店でも、情報を発信していくとドーナツ好きの方が探し出してくれるようになったんですよね。わかりにくい場所にあるので、お店を探している方は地域の方が案内し、一緒に来店してくださることもあります。そういう連鎖がたくさん重なり、お店を知る人の輪が広がっていきましたね。

千葉

すごいですね。スモールスタートからどんどんお店の認知度が高まっている。

松川さん

お客様が来てくれるようになったきっかけは、もう1つあります。僕たちはドーナツ屋ですが、最初はそんなに大量に作れなかったので1日10個もドーナツがありませんでした。だから午前中に売り切れてしまったんですが、その結果人気のお店だと思われるようになったんです。

食べログなどのサイトにもすごい名店があると書かれていて、噂が噂を呼んで皆さんが探し出してくれるようになって。気づいたら、朝から行列ができるようになったんです。戦略として狙ったわけではなく本当に偶然なんですが、幸運なことが重なって今に至ります。

千葉

完全にマーケティングですが、狙ったわけではないというのが素晴らしいですね。たまに品切れ作戦で人気があるように見せるお店もありますが、意図してやってしまうとお客様のためにならない。HUGSY DOUGHNUTは結果的にそうなって、良い意味でお客様の関心を引くことができた。商売に対する真摯な想いや楽しくやっている気持ちが、ちょっとずつ広がっていったからでしょうね。

HUGSY DOUGHNUTをオープンして、9年ほど。地域の方が道案内をしてくれるというエピソードからも、地域に愛されているお店だとわかりますね。

松川さん

ありがたいですよね。本当に地域の方々に愛していただいていると実感しています。

少し前に、自社で企画したイベントを開催したんです。河原で小さなマルシェを開いたんですが、軽いノリで開催したら3,000名ほど集まっていただいて。僕たちも地域の方も驚くイベントになって、来年の開催も考えています。本当に地域の方に応援していただけて、ありがたいといつも思っています。

千葉

聖蹟桜ヶ丘で始められたドーナツ屋が、今や町おこしにもつながっている。もちろんご自身がやりたいことをやられていると思いますが、それが結果的に周りに派生して社会のためになっている効果が生まれているのはすごいですね。

ドーナツを作りながら旅をしたいという夢も叶える

千葉

台湾やニューヨークでもドーナツを販売していると伺いましたが、それももともとやってみたかったことなのでしょうか?

松川さん

そうですね。僕は海外を旅する方々に憧れてバックパッカーになり、そのようなライフスタイルを送りたいと思っていました。お店を持っても子どもが生まれても旅はしたいとずっと思ってはいましたが、どういうふうにしていったらいいんだろうと考えていたんです。

それをFacebookに投稿したら、高校の同級生から連絡が来ました。僕の高校は国際系だったので同級生も海外出身の子が多く、住んでいる地域でドーナツを販売してくれないかというお話をいただくようになったんです。日本では正直、揚げ物であるドーナツは暑い夏にあまり売れません。お店を休みにすることが多かったので、夏は海外でドーナツを販売することにしたんです。

コロナ禍になる少し前から、台湾で現地の粉と材料を使いHUGSY DOUGHNUTのレシピでドーナツを作り提供させていただきました。2022年にはドーナツが人気なニューヨークへ行き、友人が働いている美容室の前でポップアップ店を開き、1週間ドーナツを販売しました。そこまでビジネスにはなっていませんが、ドーナツを作りながら旅をするというやりたかったことのひとつが叶い、今後もいろいろなところでやってみたいなと考えているところです。

子どもたちにも海外の生活を経験させることができるし、自分たちも旅が好きなのでバカンスを兼ねられるのが楽しい。それを楽しんでくださるファンの方々も多いので、新しい経験をしてそれをまた新しくドーナツに反映させたり、新たな出会いがつながったりするのがおもしろいですね。

千葉

いいですね。HUGSY DOUGHNUTのコンセプトは「あそぼう」だとおっしゃっていましたが、確かに遊ぶように仕事をされていますよね。

松川さん

はい。やりたいことや好きなこと、おもしろいことを皆で共有しながらやっている感じですね。

続けるシステムだけ考えて走り出すと、やりたいことの実現につながる

千葉

松川さんご自身はサラリーマンに向いていないと言われていましたが、逆に現在会社員として働いていて、今後独立したいと考えている方もいると思います。そのような方に向けて、メッセージをお願いします。

松川さん

現在働いている方から、将来独立してお店を持ちたいという相談をされることが結構あるんです。でも僕は、会社員として好きなことをするのも全然可能だと思います。大人になってから気づきましたが、今はおもしろい会社が山ほどあるので、そのような場所で働くのもいいかなと。

あとは、結構皆さんリスクを恐れるんだなって話を聞いていて思います。大人になって家族が増えると責任も増えるから、慎重な考えになるのはすごくわかるんです。でも、多分起業したりお店を開いたりするのは、リスクを考えたらできないのではないかと思います。

何とかなると言ったら元も子もありませんが、できる範囲でスモールスタートでもいい。それこそ土日だけお店を開くとか。それじゃあお店にならないんじゃないかと思われるかもしれませんが、HUGSY DOUGHNUTも9年お店を続けています。何よりも続けることが大切なので、続けるシステムだけ考えてあとは走り出したほうがいい。人生は短いので、ずっとやりたいやりたいと考えているよりは期限を決めて始めたほうがいいと思いますね。

僕は素人ですが2021年に本を出版していますし、今は映画も作っています。やりたいと思ったことは、とりあえず素人なりに最低限の予算を決めてやってみる。僕らは「あそぼう」がテーマなので、遊んでみる。形になったものを評価するのは市場なので、市場に投げてみて何かがきっかけで知ってもらったり誰かに感動を与えたりできればいいかなと思って生きています。そういう姿を見せることが、子どもたちにとっても1番いいかなと思っていますね。

千葉

素晴らしいですね。僕も1年前はこどもの未来株式会社を作っていなくて、今の自分を想像していませんでした。それでも少しずつチャレンジしていましたし、読者の皆さんも実は心にやりたいことを抱えているんじゃないかと思います。始める際に障壁があるかもしれませんが、ちょっとずつ始めることで生きるスパイスにもなって楽しいと思うので、ぜひ挑戦していただきたいですね。

松川さん、貴重なご経験をお話しいただきありがとうございました。

松川さん、そしてHUGSY DOUGHNUTの今後の展開がますます楽しみです!

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