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一人ひとりに向き合いたいという想いから、キャリアコンサルタントとして独立

キッカケインタビュー

2023.12.13

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新卒でビール会社に入社し、営業企画や新商品開発に携わる。その後人材開発コンサルティングのベンチャー企業へ転職し、マネージャーとして法人向けコンサルティング営業に関わりながら研修講師やキャリアカウンセラー業務に従事。2010年に独立してからはキャリアコンサルタントや研修講師として活動している臼井さんに、お話を伺いました。

「ヒトはキッカケがあれば必ず変われる」生き方・働き方を応援するキッカケインタビュー。
第26回目の今回は、キャリアコンサルタントや研修講師として活動されている臼井淑子さんにお話を伺いました。

大手ビール会社と人材開発コンサルティングのベンチャー企業で働いてから、2010年に独立した臼井さん。独立後はキャリアコンサルタントや研修講師として、幅広く活動しています。臼井さんがキャリアコンサルタントを志すようになった「キッカケ」や、独立に至った経緯について語っていただきました。
臼井淑子さん

臼井淑子さん

キャリアコンサルタント
新卒でビール会社に入社したのち、人に関わる仕事がしたいという想いから人材開発コンサルティング会社に転職。マネージャーとして法人向けコンサルティング営業を行うほか、研修講師やキャリアカウンセラー業務にも従事。2010年、キャリアコンサルタントとして独立。これまで延べ4,000名以上に対してキャリアカウンセリング・コンサルティングを行っており、研修講師としても活動。高校生の娘と中学生の息子を育てる二児の母。

やりたいことだけでなく好きなことを考えた結果、ビール会社に就職

千葉祐大(以下 千葉)

臼井さん、本日はよろしくお願いいたします。臼井さんは新卒で大手ビール会社に就職されたそうですが、就職先を決めたきっかけを教えていただけますか?

臼井淑子さん(以下 臼井さん)

よろしくお願いいたします。私は東京大学大学院の農学生命科学研究科にいまして、周りは研究職の道に進むのが一般的でした。ただ、私は研究職に就く自分がイメージできず、悩んでいたんです。人の話を聞くのが好きだったのでカウンセラーの仕事がしたいと思いましたが、新卒採用はあまりされていなかったんですよね。

そこである方から「やりたいことだけでなく好きなことも仕事になる」と言っていただき、好きなことを考えたところ最初に思い浮かんだのがビールだったんです。ビールが大好きなので仕事にできたらすごくいいなと思い、内定をいただいたビール会社からキャリアをスタートしました。

千葉

なるほど。臼井さんは現在キャリアコンサルタントとして独立されていますが、当時から人の話を聞くのが好きでカウンセラーに興味を持っていたのですね。

臼井さん

そうですね。人の相談に乗ったり後輩の就職支援をしたりしていたので、カウンセラーには惹かれていました。ただ、すぐ仕事にできるわけではなかったので悩んでいました。

千葉

ビール会社に就職して、最初はどのような部署に配属されたのでしょうか?

臼井さん

最初は営業企画という、営業のバックアップをする部署に配属されました。入社当時は全然仕事ができず、こんなに自分が貢献できないなんてという絶望感がすごかったですね。教えてもらってもよくわからないし、自分で考えてと言われてもどう考えればいいかわからない。本当に社会人としてやっていけるんだろうかと、鬱々とした気持ちで過ごしていました。

しかし、1年半後に希望していた新商品開発部門への異動が決まりました。きっかけは、先輩たちと世界のビールが飲めるビールバーへ行き、たまたま新商品開発部門の部長に会ったことです。私は新商品開発に興味があったので、少し酔っ払っていた勢いのまま部長のところへ行き、自己紹介をして新商品開発部門にぜひ行きたいと伝えました。

その場では何もありませんでしたが、異動の時期になってから上司に新商品開発部門へ行かないかと言ってもらえたんです。ビールバーでの出会いがあったからこそ、希望していた部署に行けたんだと思います。

千葉

おもしろいですね。仕事の場ではないところで出会ったからこそ、1歩踏み出しやすかったのかもしれませんね。

人生最大の挫折を味わいながらも、論理だけではない仕事の進め方を学ぶ

千葉

希望していた新商品開発部へ異動されてからは、絶好調で仕事を進められたのでしょうか。

臼井さん

いいえ。やる気満々で異動したものの、人生最大の挫折を味わいました。

新商品開発は、全社プロジェクトなんです。まずは研究部門に商品を試作してもらい、商品を試作したら工場部門の人に作れるかどうかを聞き、原料部門の人に原料を調達できるか相談し、どう売っていくかを考える。新商品開発部門のメンバーは全社プロジェクトのリーダーであり、入社2年目でそのような立場になった私は専門家や年上の方を動かさなければならなかったので、苦労しました。

また、主力商品であるビールの新商品を1つ出すのは、とても大きな経営判断です。何を発売するかがその年の経営計画に直結するため、経営陣との対話も必要でした。ただやりたいだけでは済まない世界で、2〜3年ほど必死で仕事をしていました。

千葉

とても貴重な経験をされていますね。新商品開発に携わるなかで、学んだことを教えてください。

臼井さん

先輩や上司に助けていただきながら、人と仕事をするとはどういうことなのかを学びました。例えば人にお願いする場合、気持ちよく動いてもらうためにはどうすればいいのかなど、論理だけではない世界を知ることができたと思います。

時に飲みニケーションをしながら、時に会議室で激しい議論をしながら、商品を作っていく喜びを段々と感じられるようになりました。実際に商品が発売されてマスコミに取り上げていただいたときは、自分の作りたいビールを作ることができたという大きな喜びになりましたね。

千葉

ありがとうございます。会社として数字が必要でもその先にいるのは人なので、やはり数値的な部分だけでなく情緒的な部分がなければ仕事も上手く回らないですよね。新商品開発のプロジェクトでは両方を網羅しなければならず、すごいことだと思いながら聞いていました。

目の前の1人を大切にしたいと考え、人材開発ベンチャー企業に転職

千葉

臼井さんは今でもビールが大好きだと伺いましたが、それでもビール会社を辞めて2社目に転職されたのですね。

臼井さん

はい。新商品開発をするなかで、私自身が満たされていないと感じたんです。当時参加したワークショップで嫌いな仕事を振り返る機会があったんですが、当時私が嫌いだったのは定量調査でした。ビールを発売する前にコンセプトやパッケージ、味に関する意見を数百名からもらって調査する仕事で、それがすごく嫌だったんです。

何で嫌なんだろうと考えたとき、相手の顔が見えないからだと気づきました。一人ひとりいろいろな想いを持って調査に協力してくれているのに、商品を出す際には一人ひとりの声に応えられないというジレンマがあったんです。

そこで、私はたくさんの人を相手にするよりも目の前の1人を大切にして、その人に応えるような仕事をしていきたいと思いました。学生の頃からカウンセラーに興味があったこともあり、次は1対1で人と関わる仕事がしたいと考えるようになったんです。そんなとき、たまたま会社を立ち上げる知り合いから声をかけていただき、人材開発ベンチャー企業に転職しました。

千葉

嫌いな仕事を振り返るというのは、あまりやったことがありませんでした。確かに、嫌いな仕事を掘り下げることで自分が何を大事にしたいのかが見えてきますね。

大手ビール会社から創立期のベンチャー企業へ転職するにあたって、不安はありませんでしたか?

臼井さん

転職の不安よりも、向いていない仕事を続けるしんどさのほうが大きかったですね。頑張っていましたが、大勢の人に何かをする仕事は私に向いていなかった。もうこんなに苦しい想いはしたくない、自分のやりたいことをしたい。その気持ちに素直になったほうがいいと思い、転職を決めました。

ただ、ビールが大好きで働いていた会社も好きだったので、離れなければいけないのがとにかく悲しかったんです。私は新しい道に進むべきときなんだと決めて転職しましたが、別れの寂しさがありました。

千葉

何かしらネガティブな要因があって転職される方も多くいるなか、会社が好きすぎて後ろ髪を引かれながら新しい道にチャレンジするというのは、すごく素敵な歩み方ですね。

2社目の人材開発ベンチャー企業に転職されてからのお仕事は、いかがでしたか?

臼井さん

転職してから、2度目の大きな挫折を味わいました。仕事内容が法人向けのコンサルティング営業という今までと全然違うものだったんですが、周りは戦略コンサル出身で仕事ができる方ばかりだったんです。何で私はここに来てしまったんだと思うくらい、転職当初はとても大変でした。

ただし、周りの優秀な方と張り合っても仕方がないので、自分にできることを考え始めたんです。私は1対1にこだわっていたので、営業マネージャーとしてお客様との関係性を誠実に作っていくことを意識しました。お客様である企業の人事や人材開発の方との関係性を大事にして、彼らが解決したいことを全力でサポートしたんです。

そこから売上も少しずつ上がるようになり、自信もついて、周りからも認められるようになりました。自分の役割を果たすために、少しずつ乗り越えた形ですね。

千葉

ありがとうございます。自分の強みを活かして努力して成果が出ると、自信がついて乗り越えていけますよね。

仕事命の働き方が、出産を機に大きく変わった

千葉

臼井さんは、2社目で働いているときに出産を経験されたのですよね。

臼井さん

そうですね。2社目に転職するまで私は仕事命で、若かったこともありずっと休みなしで働いていたんです。だから結婚はしたものの、子どもは全く考えられませんでした。

ただ、当時はダイバーシティが少しずつ推進されるようになってきた時代で、2社目の社長も結婚して子どもを生んだ女性が働き続けられる社会にしたいと本気で考えている方だったんです。そこで自分の意識も変わっていき、妊娠・出産をしました。

千葉

なるほど。仕事一筋で頑張っていた頃と子どもが生まれたあとは、考え方や働き方も大きく変わったのではないでしょうか?

臼井さん

そうなんです。子どもができてからはそれまでと同じように働き続けられないと感じたので、自分自身の働き方改革をしなければなりませんでした。

子どもが生まれるまでは時間をかければいいものができると考えていたんですが、生まれてからは使える時間が限られていたので、短時間でいかにいいものを作るかという考え方に切り替えました。仕事命のまま働いていたらいつか倒れていたと思うので、出産を機に考え方や働き方を変えることができてよかったと思っています。

リーマンショックによるリストラから、フリーランスに舵を切る

千葉

僕も人材業界にいたからわかるのですが、おそらく臼井さんが2社目で働かれているときにリーマンショックが起こりますよね。

臼井さん

そうですね。リーマンショックの影響でいろいろな会社が人材育成費用を削減し、自社の売上も厳しくなっていきました。自社の規模を縮小しなければならなくなり、私も2009年にリストラされてしまったんです。こんなに頑張ってきたのに、とショックでした。

それでも自分が専業主婦になることはイメージできず、働き続けたいと思ったので転職活動をしたんです。しかし、まだ子どもが2歳だったので残業はできません。リーマンショックで採用を控えている企業が多いなかで、働く時間に制約がある母親の転職活動は上手くいきませんでした。半年ほど経って企業で働くのは諦めたほうがいいと感じて、フリーランスに舵を切った形です。

千葉

大変な時代だったのは、僕もよくわかります。独立を決めてからは、どのようにお仕事をされていたのでしょうか?

臼井さん

実は独立を決めたときに2人目を授かったので、独立当初からアクセルを踏んでバリバリ仕事ができたわけではありませんでした。最初は育児を優先して、やれる範囲でやっていこうと考えていましたね。

私は大学院でも後輩の就職相談に乗っていたので、独立してから大学のキャリア支援がしたいという気持ちがあったんです。たまたまその求人を見つけたので、週2〜3日大学でキャリア支援をしながら空いた時間でできる仕事をしていました。

千葉

ありがとうございます。キャリアコンサルタントとして経験を積みながら、社会保険労務士の資格も取られていらっしゃるんですね。

臼井さん

はい。社労士資格を持って人事の仕事をしている夫から、勉強しておくといいと言われたんです。少し余裕があるときに勉強して資格を取得できたのは、今振り返ってみると大きかったですね。そこから仕事の幅も広がったので、良い時間の使い方ができたと思います。

フリーランスになると、自分で意識しないと仕事の幅が広がっていかないんですよね。私も気をつけていて、自分自身を常にアップデートしていく必要があると感じています。今の仕事の隣の領域でできることがないか探すと、仕事の幅が大きく広がることもあると思います。

ただ、今の仕事に全然関係がなさそうでも、興味があることをやるのも大切なことだと思います。今までいろいろな方のキャリア相談に乗ってきましたが、これまでやってきたことを活かさなければならないという強迫観念のようなものを持っている方が多いんですよね。全く違うことをやると今までやってきたことを捨ててしまうような気がして、執着になっている方が多い。どこかでいずれつながるから、今興味があるならやってみようとアドバイスすることもあります。

「自分が誰だったか思い出させる人」として、キャリアカウンセリング等を行う

千葉

現在の活動内容について、改めて教えてください。

臼井さん

私は現在、「自分が誰だったか思い出させる人」という肩書きを作って活動しています。皆それぞれ強みや大事にしていることがありますが、それを忘れてしまっていたり、やらなければいけないことを優先していたりする場合があると思うんです。本当はあなたにしかない強みや大事にしている願いなどがあるはずだから、そこを思い出してほしいという想いを込めて活動をしています。

具体的には、キャリアカウンセリングやコーチング、研修などを行っています。それらを通じて、あなたの本当の自分を思い出して生きたかった人生を生きてほしいと考えています。

千葉

ありがとうございます。僕も自分が主人公の人生を生きる人を増やしたいと思いながら会社を経営しているので、とても共感します。

臼井さん

ダイバーシティが浸透してきて、言われたことをやるより一人ひとりが個性を発揮していく時代になってきたとは思います。しかし、今まで言われたことをやってきたからこそ自分の個性がわからなくなったという方も多い気がしているんです。

自分の個性を思い出してそれを世の中に発揮していくことが求められているし、そうしたいと考えている方も増えてきている感覚がありますね。私は、そのような方をサポートしていきたいと思っています。

千葉

大変な経験もたくさんされたなかで自分のやりたいことを見つめ直し、不可抗力の外部環境の変化が起きてもきちんと向き合ってキャリアを築いてきた臼井さんのお話に、背中を押される方も多いのではないかと思います。臼井さん、本日は学びの多いお話をありがとうございました。

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