ママの自立支援×サステナブル
一配達員から起業家へ
千葉:毎週火曜日に行っている「こどもの未来トーク」、第21回目となります。本日のゲストはMerone代の森川さんと同社執行役員の清水さんです。本日はどうぞよろしくお願い致します。
まずは森川さんから、自己紹介をいただいてもよろしいでしょうか?
森川:Merone代表取締役の森川くみこと申します。独立してもう6年になるのですが、実は私はもともと契約社員の配達員だったんです。足の怪我をしたことで配達員の仕事ができなくなり、その時に自宅でできる仕事を考え始めたことがきっかけとなりました。
転売ではない物販のカタチ
千葉:配達員から起業されるきっかけは怪我だったんですね。自宅でできる仕事とはどういうものをイメージされていたのでしょうか?
森川:不注意で骨折してしまったんです(笑)。でもそれが今につながると考えると不思議ですよね。自宅でできる仕事として「不用品販売」というテーマに出会い、物販に興味を持ち始めました。いわゆる「転売」ではなくメーカーさんの過剰在庫や売れ残ってしまったタグ付き、新品在庫を直接引き取り、自立したいママに格安で卸して、ママの働き方の支援をするという「サステナブルな物販の形」を実現しています。
千葉: 正に現代の企業側と個人側双方の需要を同時に満たす素晴らしいビジネスモデルですね。清水さんも自己紹介をお願いします。
経済的支援と精神的支援 2本の柱
清水:僕は元々はブライダル業の出身のためファミリーに携わることとして、家族支援の会社を設立・運営しておりました。その頃大きな詐欺被害に遭い、たくさんの方々に助けていただいた経緯があります。その後、親交があった森川と出会い、家族というテーマをママに絞って「ママの経済的・精神的支援と自立」のために日々奮闘しているという状態です。役割としては森川が先陣を切り、僕は後方支援という分担となっています。
千葉: 前方と後方での役割分担がしっかり明確になっているからこそ今の成功の形があるのだと感じました。転売とは違う物販、とは具体的にどう違うのでしょうか?
“転売”イメージを払拭
転売と物販の違い
森川:元々は女性の自立支援を行いたいということが軸にありました。ただ、自分にあるスキルが物販専門だったので、その範囲でできることを模索した結果が今となります。ただ当初は物販というと、チケット転売や近年の社会情勢も受けてマスク転売等、イメージが下降していく現状があり、それを食い止めるため「転売を脱ぐ」という意味の「Re:seller(リセラー)」というコンセプトを設定しました。転売の悪いイメージを払拭して、「子供に対して胸を張れる仕事」としてママたちに自信を持っていただけるビジネスにしたいという思いが軸となっています。
自分でも稼げるという自信
森川:余剰在庫や過剰在庫の観点として、サステナブル・SDGsのなかにある「つくる責任つかう責任」を一つの項目に挙げている企業も多いという点に着目し、メーカーに依頼をして独占的に卸していただく形を実現しました。そしてママたちが欲しいものは自己消費し、他は販売するという流れで自分自身で生計を立てられる、という自信につなげてもらっています。そうしたママたちをどんどん増やすことができるように支援していこう、という会社になっています。
バリキャリと専業主婦の間の働き方
千葉: 素晴らしいですね。在宅物販スクールでそのようなお話もされているのでしょうか?
森川: 株式会社Meroneでは個人向け教育事業・スクールコミュニティ事業の一環として在宅物販スクールの「Re:che(リッシュ)」、託児事業の「ママズスマイル」、そしてスクールコミュニティの「LUC」の3つがあります。また企業向けコンサルティング事業としても在宅物販スクールの「Re:che for Business」があります。ここでは主に、個人向けの在宅物販スクールで「ママたちの働き方」についてお話ししています。「キャリアを築くための働き方」と「専業主婦」の間の働き方があってもいいと思うんですよね。だからこそ、自立支援という言葉の意味が「社会的に自立する」だけでなく、「ママたちにとって、今だからこその“新しい働き方”」を意味するようになればと思っています。
ママたちのサードプレイス
Meroneの勝因はママたちの想いから
千葉:そのスクールの在籍数と方法について具体的に教えてください。
森川:会員数は有難いことにもう少しで1100人に到達します。元々個別コンサルを行なっており、特に女性向け・ママ向け、とは考えていなかったんです。結果的に来てくださった方はママが多いということが分かり、ママに向けてのニーズか多いという事実に気づきそこからママ向けに舵を切りました。
千葉:なるほど。初めからママたちが対象、というわけではなかったんですね。リユース、リセールの事業は今多くの競合他社があると思うのですが、後から参入したにもかかわらずMeroneが事業成長できている勝因は何だとお考えですか?
清水:仰る通り、僕たちは流通という業界の中ではかなり後発だと認識しています。それでも受け入れていただいているのは本日のテーマでもある「ママたちの価値観・想い」というところと「企業側の価値観・想い」がうまく一致したことが大きいと捉えています。廃棄品や不良品も含めて、僕たちがいてもいなくてもメルカリやネット上で販売されてしまうんです。この状態はメーカー側や企業側からしてみたら、自分たちが作り、扱っていた大切な商品が知らない人に勝手に売られてしまう事実は許し難いことでもあるわけです。ここでママたちの「メーカー・企業側の想いを大切にしながら売る」というエピソードが活きた。「どうせ止められない二次流通だったら心ある人たちに売っていただきたい」と、メーカー・企業側からも賛同を得られた形ですね。
千葉:それはママたちもメーカー側も嬉しいですよね!
清水:僕たちもスクールで大切にしている教育方針なので、それが受け入れていただけているのは本当に嬉しいですね。スクールもお堅いスクールというより、どちらかというと「ママたちのサード・プレイス」側面が強いんです。定期的にママたちにインタビューさせてもらうのですが、「何が自分にとって一番嬉しいですか」「何がスクールのメリットだと思いますか」という質問に対して、「自分たちの居場所をもらえた」という回答が格段に多い。世の中で様々なキャリアアップスクールがありますが、大抵はまずスキルアップ段階があり、その次に給与・年収アップがつながっていく場合が多いと思います。Meroneに来てくれるママたちは正社員雇用にこだわらずに今のスタイルや今の自分が大切にしたいものを優先順位高く大事に考える、という方が多いため、「人生のステージを上げるためにまずすること」を叶えられる場所としてMerone をつかっていただいている。そして僕たちはその場所の提供者である、という構図ですね。こうした様々な立場の価値観が受け入れられた時、それがリユース、リセールという形として成功したんだと思っています
最初の生徒は母だった
千葉:それぞれのつながりと想いが重なり成功するビジネス、最高ですね。元々は森川さんの原体験からのスタートだったと初めにお伺いしましたが、スクールビジネスとして捉えた時には何か別のきっかけなどあったのでしょうか?
森川:実は一番初めの生徒は私の母だったんです。年齢を重ねれば重ねるほどモノが多くなっていきますよね。母はずっと一人暮らしをしているのですが、70歳にもなると働きにはいけず、年金も早期受給していたので金額的には少ない。子供に頼るのも・・・ということで、有り余るモノたちを捨てるくらいだったら売って自分の稼ぎ方にしてみればいいのではないか、とこのタイミングで母に提案したのがきっかけでした。母は全くスマホが使えなかったので、メルカリのインストールからスタートし、売り方を教えていきました。それがコンサルの原点かもしれません。今も会員の方は18歳から73歳までいらっしゃるんですよ。
千葉:70歳の方でも稼げる稼ぎ方!年齢幅もすごいですね。
ママ個人の価値観
自分が二の次になってしまうという考え方
千葉:ここで個人的な疑問なのですが・・・ママって自分ではなく子供優先、旦那さん優先、という考え方が多い気がするのですが、これってどういう感覚なのかなあといつも不思議に思うんです。僕の相談になってしまいすみません(笑)
森川:いえいえ(笑)ママたちって皆さん、ほとんどの方が自分よりも家族のために自分は頑張る、という価値観に移行していく方が多いように感じます。子供は愛すべき存在、大好きな存在、自分がどうなっても守り抜く対象である、と思ってらっしゃる方が多いのではないでしょうか。だからこそ、自分は二の次になったとしても、子供のために時間とお金を投資するという思考に自然となっていくのではないかと思うんですよね。そして自分が働いていなければその裁量は小さくなるわけで、自分の欲しいモノ欲や食べてみたいランチは結局我慢してしまう。使えてもごく少額にしている、という印象ですね。
千葉:僕はずっと自分のことも大事にして欲しいな、と思っていたのですが・・・お母さんってすごいですね!なんだか感動しました。
成熟したママさんは離婚する!?
清水:これは難しい話ではあるのですが、成熟したママさんは離婚する確率が高い傾向にあることがわかっています。お互いに自立した関係で結婚されたご夫婦もいらっしゃる一方で、自立していない状態での結婚をされたご夫婦もいらっしゃる。そうすると、旦那様の収入だけでなく、自分自身の収入を確立して人生を切り開いていこうとするママさんたちにとっては経済的にも精神的にも成長して自立した時、ふと「私は1人で生きていける」という結果になる。だからこそ、パートナーシップとして考えた時にプラスαになるコンテンツを扱えたらいいのではと考えています。
千葉:具体的にどんなプラスαがあるのでしょうか?
清水:実は現在、Meroneのスクールでは「家族関係をよくする」ということをモットーに、会員の方のパートナー制度を設けているんです。会員お一人につき、もうお一人を無料で会員にお招きするという制度です。旦那様でもお子様でも、ご兄弟様や親御様などどの方でも大歓迎です。この制度を使ってご家族が一緒に物販を行うようになり、物販を通して家族内コミュニケーション量が増え、その結果物販もうまくいき、家族関係もよくなる、という相乗効果があります。実際に夫婦関係が改善しました、という嬉しいお声もいただいています。
千葉:すごく良い制度ですね。これは最近の社会情勢の影響等も関係していますか?
清水:それはありますね。コロナ禍で加速化されたというか、顕在化した、と言った方が良いかもしれません。元々は潜在的にあったところにこの社会情勢で一気に表面化した、と捉えています。
千葉:経済的にも精神的にも自立して、パートナーとの価値観が変わった結果、「健全な離婚」になる場合もある。一方で、パートナーと一緒に関係を改善していくというサービスにニーズもある、ということなんですね。
結婚観の違いから生じるゴールのズレ
森川:男性は結婚が遅くても、家庭を作ることそのものには生物学的に大きな支障はないと言われますが、女性はどうしても生物学的にいつまでも可能というわけではないですよね。そう考えると結婚時、すでにお互いの結婚観のずれや違いがあった場合は時が経つにつれてどんどん大きくなってくる。様々なライフステージの変化でお互いが擦り合わせできていくご夫婦もいらっしゃれば、それが上手くいかないご夫婦もいらっしゃる。セルフイメージが下がっていってしまうご夫婦が多い印象がありますね。
“Merone”流オンライン・オフラインの関わり方
民間保育所=心と心がつながる居場所
千葉:Meroneのスクール体験では入会者がどう変化していくのか、ぜひ教えてくだい。
森川:生理的欲求から上がっていこうとされる方が7割、社会的欲求から上がっていこうとされる方が2・3割いらっしゃる印象です。生理的欲求というのはいわゆる、「安心・安全」の心理的安全領域となり、反対に社会的欲求は社会からの承認欲求や自己実現欲求を意味します。一緒に頑張ろうとしている仲間が全国にこんなにいたんだ、という発見と仲間からの刺激によって自分も周りに影響を与えていきたい、とポジティブに考えられるようになる。その気持ちが1人の女性としての居場所や自信につながり、この場でこんなにも生き生きしている、という新たな自分の発見がその後のセルフイメージのアップに繋がっていきます。
千葉:それがママのサードプレイスなんですね。素晴らしいですね。スクール以外にもそうした居場所はあるんですか?
森川:リアルイベントも月に1・2回開催しています。弊社では「心と心が繋がることができる居場所」という定義で捉えているので託児所運営にもその観点が生きているんです。託児所で働くことで、またそれも一つの居場所発見に繋がり、新しく働く自分の発見に繋がる。労働力という観点だけではなく、コミュニティ理論での考え方ですね。
ママのビジネス合宿
千葉:最後に、最近のリアルイベントについて何かあれば教えてください。
清水:大きな規模のもので言うと、昨年ではあるのですが熱海でビジネス合宿を開催しました。ビジネスホテルではなく熱海ニューフジヤホテルをママさん100名で借りての一泊5万円のビジネス合宿です。
熱海ニューフジヤホテル【公式サイト】熱海温泉旅行 - 伊東園ホテルズ (itoenhotel.com)
ここで出た利益は熱海市に寄付させていただいているんです。熱海在住の会員さんがいらっしゃり熱海の土砂災害の大変さを伺い、ママさんの力で何かできないだろうかと。ママたちの力、Meroneでできることとして勉強合宿を熱海でやることにしたんです。
街は2時間土砂に襲われた~検証・熱海土石流~ | NHK | WEB特集 | 大雨(2021年7月)
実は、当日台風で新幹線が全て止まり中止の言葉が頭をよぎったのですが・・・なんと8時間以上の遅刻をしながらも参加者全員がキャンセルなしで来てくれたんです。合宿終了後も満足度100%というアンケート結果となり、大成功となりました。
これがきっかけで今年からは全国各地にママさんのワーケーション施設を設定する案も出てきているところです。
千葉:素晴らしいストーリーですね。感動してしまいました。今後の動きが気になります。本日はたくさんの貴重なお話をありがとうございました。
女性の経済的・精神的自立を目的とし教育事業を多岐に渡り展開。
従来の物販ではなく、廃棄品や不要品をアップサイクルし、
売り手の品格も教育していくことで業界の活性化を目指し、
女性やママに特化したスクールとして在宅物販スクール「Re:che」を運営、生徒は1,100名超。
2021年以降企画運営した展示会イベントは
業界平均の3倍を記録。
現在は自社のみならず他社のスクール運営も補佐し、
スクール単位のコミュニティ運営も精力的に推進し
多方面から教育事業に注力している。
2022年8月、日経WOMANアンバサダー就任