日経こども未来経済フォーラムで感じた「こどもの教育」と 「大人の人的資本」の共通項
こどもの未来株式会社の代表の千葉です。「キッカケ」編集長のつぶやきでは、ライフステージに合わせて、キャリアを再発見するお役立ちとなるような、働き方や生き方に関する様々なニュースや情報を呟いていきます。音声メディアでも配信している内容を記事としてもお届けさせて頂きます。
日経こども未来経済フォーラムとは
今回は、2023年5月10日でオフラインとウェビナーのハイブリットで開催された『日経こども未来経済フォーラム』に参加して感じたことををを取り上げてみようと思っています。
まず概要として、本イベントは日経新聞を購読している中で認知しました。
SDGsの文脈で下記のような概要で定期的に開催されている大型イベントのようです。
年6回の大型シンポジウムを開催し、内外に広く発信します。 2023年度は、春、秋、冬に開催されるSDGsフェス期間中にシンポジウムの実施を予定しています。 企業関係者からの先進的な取り組み報告、第一線の有識者による示唆富む議論を通じ、SDGsの最新動向を発信します。 シンポジウムの模様は、日本経済新聞・Financial Times等の日経グループの主力媒体でも採録。広く内外へ周知することでSDGsの推進を図ります。 参画企業・団体のトップに本シンポジウムにご登壇いただきます。
本イベントは、こども政策担当大臣の小倉大臣や、2023年4月に発足したばかりのこども家庭庁の長官である渡辺 由美子 氏も登壇しております。
また、学力の経済学の著者である中室先生や株式会社ユーグレナ代表の出雲社長も登壇しており、官民産学連携をしているイベントです。
冒頭の小倉大臣やこども家庭庁の渡辺さんのセッションはウェビナーで参加させて頂きました。
後半のセッションは、丸の内現地に訪問して会場にて聴講をさせていただき、たくさんの学びと気づきがあったのでそちらを紹介していきます。
「こども・子育て政策の強化について」 byこども政策担当大臣 小倉 將信 氏
小倉将信子ども政策担当大臣は、「こども・子育て政策の強化」について積極的な取り組みを訴えています。その主な見解には、以下のような要点が述べられていました。
1、保育所の増設および保育士の待遇改善: 保育所不足解消のための施設増設と、保育士の賃金アップや研修制度の充実を進めることで、質の高い保育サービスを提供します。
2、一時金支給制度の拡充: 出産や子育てにかかる費用を補助するため、児童手当や出産一時金などの支給額を増額し、対象者を拡大します。
3、育児休暇制度の見直し: 育児休暇の取得が容易になるよう、制度を見直し、男性の育児休暇取得率向上を目指します。
4、地域子育て支援センターの設置: 地域に根ざした子育て支援を充実させるため、各地域に子育て支援センターを設置し、保護者同士の交流や相談窓口を提供します。
5。子どもの貧困対策: 生活困窮家庭向けの教育支援やアフタースクールケアの充実を図ることで、子どもたちが安心して学び、成長できる環境を整えます。
6。若者の就労支援: 青少年の職業教育や職業訓練プログラムを充実させ、学びと就労の機会を提供することで、子育て世代の経済基盤を強化します。
これらの施策により、子どもたちが安心して育ち、親が子育てをしやすい社会を目指しています。小倉大臣は、政府として子どもたちの未来を支えるため、総合的な子育て支援政策を推進する考えを強調されているのが印象的でした。
「共働き・共育ての推進」こども家庭庁長官 渡辺 由美子 氏
渡辺由美子家庭庁長官は、「共働き・共育ての推進」を強く支持し、その重要性を訴えていました。
渡辺氏は、現代の家庭で両親が共に働くことが、経済的安定や子どもの健やかな成長に寄与すると述べており、また、男女平等の観点からも、家庭内の役割分担を見直すことが重要だと指摘しています。
共働きを推進するために、渡辺氏は企業に対し柔軟な働き方を導入するよう働きかけており、テレワークやフレックスタイム制度の普及を促しています。これにより、両親が仕事と家庭の両立をしやすくなると考えられます。また、育児休暇の取得率向上や、男性の育児休暇取得に対する理解を深める取り組みも進めています。
さらに、共育ての推進にも力を入れており、家庭内での育児負担を均等に分担することが、子どもの心身の発達や親子関係の向上に繋がると主張しています。そのため、地域や企業、行政と連携し、家庭向けのサポート体制を充実させることを目指しています。
具体的には、子育て支援センターや保育所の整備、家庭教育支援プログラムの提供、子ども食堂の拡充など、子育て家庭に対する支援策を多角的に展開しています。また、両親が子育てに関する情報やスキルを習得できる場を提供することで、共育て意識の向上を促しています。
渡辺由美子家庭庁長官は、「共働き・共育ての推進」により、家庭の経済的安定や子どもの健やかな成長を実現し、男女平等を促進することを目指しています。そのために、働き方の柔軟化や育児休暇の取得率向上、子育て支援策の充実など、多岐にわたる施策を推進していく方針で締め括られておりました。
パネルディスカッション 「希望ある社会のためのこどもへの投資とは」
・中室 牧子 氏
慶応義塾大学総合政策学部教授
【略歴】
慶應義塾大学環境情報学部卒業後、日本銀行、世界銀行等を経て、コロンビア大学にてMPA、Ph.D.取得。2013年慶應義塾大学総合政策学部准教授、2019年より現職。専門は教育を経済学的な手法で分析する教育経済学。2021年よりデジタル庁 シニアエキスパート(デジタルエデュケーション)公益財団法人東京財団政策研究所 研究主幹を兼任。規制改革推進会議、経済・財政一体改革推進委員会等、政府有識者会議の委員を務める。
著書はビジネス書大賞2016準大賞を受賞した「『学力』の経済学」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、週刊ダイヤモンド2017年ベスト経済学書第1位の『原因と結果』の経済学」 (共著、ダイヤモンド社)など。
・出雲 充 氏
ユーグレナ 代表取締役社長
【略歴】
駒場東邦中・高等学校、東京大学農学部卒業後、2002 年東京三菱銀行入行。2005年株式会社ユーグレナを創業。世界初の微細藻ミドリムシ(学名:ユーグレナ)食用屋外大量培養に成功。世界経済フォーラム(ダボス会議)ヤンググローバルリーダー、第一回日本ベンチャー大賞「内閣総理大臣賞」、第五回日本 SDGs 大賞「内閣総理大臣賞」受賞。著書に『僕はミドリムシで世界を救うことに決めた。』(小学館新書)『サステナブルビジネス』( PHP 研究所)。経団連審議員会副議長・スタートアップ委員長、内閣官房知的財産戦略本部員、新しい資本主義実現会議スタートアップ育成分科会員、文部科学省起業家教育推進大使、ビル&メリンダ・ゲイツ財団 SDGs Goalkeeper
・田中 沙弥果 氏
NPO法人Waffle
Co-Founder/CEO
【略歴】
2017年NPO法人みんなのコード入職。文部科学省後援事業に従事した他、全国20都市超の教育委員会と連携し、教員向けにプログラミング教育支援事業を推進。2017年より女子およびジェンダーマイノリティの中高生にIT教育の機会を提供。2019年IT分野のジェンダーギャップの解消を目指して一般社団法人Waffle(現 NPO法人化)を創業。2020年 Forbes JAPAN誌「世界を変える30歳未満30人」受賞。内閣府 若者円卓会議 委員。経産省「デジタル関連部活支援の在り方に関する検討会」有識者。ガールスカウト日本連盟評議員。著書に「わたし×IT=最強説 女子&ジェンダーマイノリティがITで活躍するための手引(著者:Waffle、リトルモア刊)」。
・石塚 由紀夫 氏
日本経済新聞社 総合解説センター 編集委員
【略歴】
1988年日本経済新聞社入社。女性活躍推進や少子化、企業の人材戦略などを主に取材・執筆。2015年、女性面編集長就任。16年より現職。著書に『資生堂インパクト ―子育てを聖域にしない経営』など。15年法政大学大学院MBA(経営学修士)取得。23年度慶応義塾大学ビジネススクールで非常勤講師(人材マネジメント論)
さまざまな議論が展開されて、とても参考になるパネルディスカションでした。
「同調圧力」や「アントレプレナーシップ」などのキーワードも多く語られており、大人も子供共に変わっていくことが求められていると強く感じました。
- 中室先生
- 異次元の子育て予算に関して思うこと
- 「質の低い教育」はNGで「質の高い教育」が無償化されるべき
- 質の高い教育を作るインセンティブが現在はない
- このまま、授業料を無償化するのは本当に良いか、議論が必要だと思う
- 出雲さん
- 1、日本の若者の自己肯定感・自己効力感がダントツで低い
- 2、自己肯定感や効力感をさげることを企業や学校がやってはいけない
- 3、リーダーが変わらないといけない
- 家庭の中では、お父さん・お母さんこそが変わる必要がある
- 自己効力感を高めるように自らが行動することが大事
- 会社の中では、経営者こそが変わる必要がある
- 社内にアントレプレナー人材がいない、など言ってはいけない
- まず、スタートアップチャレンジをする
- 田中さん
- 子供たちがやりたいことをできるように、先生たちは応援してほしい
- 社会の精度を変えることは、「評価精度」を変えることが大事
- 今ある、評価基準を一定のマジョリティに対して優遇されていないかを見直してほしい
パネルディスカッション 「2050年のグローバルリーダーを考える」
・中島 さち子 氏
ジャズピアニスト、steAm CEO
steAm BAND代表理事
大阪・関西万博テーマ事業プロデューサー
【略歴】
現在は主に音楽・数学・STEAM(教育)・メディアアートなどの世界で、国内外にて多彩に活動。ニューヨーク大学Tisch School of the Arts, ITP (Interactive Telecommunications Program)修士。
国際数学オリンピック金メダリスト(日本人女性初)。
明治大学先端数理科学インスティテュート(MIMS)客員研究員。
東京大学大学院数理科学研究科特任研究員。
文部科学省中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会委員。
経済産業省産業構造審議会臨時委員,教育イノベーション小委員会委員。
経済産業省「未来の教室」実証プロジェクトにも多数携わる。
米日財団日米リーダーシッププログラムフェロー。フルブライター。
主な著書に『知識ゼロからのSTEAM教育』(幻冬舎)『人生を変える「数学」そして「音楽」』『音楽から聴こえる数学』(講談社)絵本『タイショウ星人のふしぎな絵』(絵:くすはらじゅんこ、文研出版)他、主なCDに中島さち子PianoTRIO ”Rejoice” “希望の花”他。
・村上 由美子 氏
MPower Partners Fund L.P.ゼネラル・パートナー
【略歴】
OECD(経済協力開発機構)東京センター元所⻑。岸田内閣「新しい資本主義実現会議」を含む、内閣府、経産省、外務省など多くの審議会で委員を歴任。2016年に上梓した『武器としての人口減社会』はアマゾン経済書部門にてベストセラーとなる。OECD以前は、主にニューヨークおよびロンドンのゴールドマン・サックス証券会社のマネージメント・ディレクターとして約20年間勤務。カンボジアの国連平和維持軍や、東カリブ海地域の経済開発援助にも携わった。上智大学、スタンフォード大学院、ハーバード大学院卒。
・宮野 公樹 氏
京都大学 学際融合教育研究推進センター 准教授
【略歴】
京都大学学際融合教育研究推進センター准教授。学問論、大学論(かつては金属組織学、ナノテクノロジー)。総長学事補佐、文部科学省学術調査官の業務経験も。国際高等研究所客員研究員も兼任する他、2021年5月一般社団法人STEAM Associationを設立し代表理事に。2008年日本金属学会論文賞等の学術系の他、2019年内閣府主催第一回日本イノベーション大賞の受賞も。前著「学問からの手紙—時代に流されない思考—」(小学館)は2019年京大生協にて一般書売上第一位。近著「問いの立て方」(ちくま新書)。小中校むけ「世界が広がる学問図鑑」2023年2月(Gakken)の監修も。
・中村 奈都子
日本経済新聞社 総合解説センター 編集委員
【略歴】
お茶の水女子大学卒、1993年日本経済新聞社入社。流通経済部を皮切りに東京・大阪・名古屋で主に企業取材と消費者取材を担当。98年元旦から7月まで連載した日経の一面企画「女たちの静かな革命」の取材班メンバーとして、多様な生き方を選び始めた女性たちを取材。2017年に創刊したNIKKEI The STYLEの初代編集長を経て19年4月から月曜朝刊「女性面」編集長、21年4月から現職。働き方改革や少子化対策、キャリア形成、ダイバーシティ推進などに取り組んでいる。消費生活アドバイザー、キャリアコンサルタント。
フィンランドと日本の子供たちの類似点と相違点とは
2050年のグローバルリーダーというテーマで、いま教育は何が求められているのか。
他国との比較や自己肯定感や個性の話などとても参考になる内容が多かったです。
- 村上さん
- OECDの調査でも出ている
- 大学で理系が少ないなど、歪な問題
- 点数は高いのに、「自己肯定力」が低い
- 大志が低い
- 平均点は高いけど、特出している人が少ない
- 中島さん
- 能力の問題ではなく、教育の問題
- 「正解」がないようなマニュアル外に弱い
- 世界の教育の方がそこに対する打ち手が早かった
- 自分の知識と活動が早くリンクするようになればいい
- 村上さん
- 自信がある人ほど、リスクをとりにいく傾向がある
- 失敗させて失敗をよしとして学ぶようにする
- 回答が世の中の正解以外のものだと疑問を抱く力
- それを良しとする文化が出ることが大事
- 中島さん
- 数学は哲学
- 「知る」と「作る」の違い
- 研究者や起業家や経営者に近い力が万人に求められている気がする
- 宮野さん
- 食っていく力も大事だが、人は必ず死ぬ
- それを忘れない
- 中島さん
- 自分の中でも様々な多様性を感じる
- 同じような文化の人が多くなりがちな日本人
- 違う感覚や価値観を持つ人と交流するのが海外では多い
- 学びや働く上でも、多様性に触れることが大事
- 宮野さん
- 遠くに行くならみんなで、早く行くなら一人で
- 「個性」はみんなもっていて、「能力」伸ばす
- 「能力」伸ばしまくっている個性の集団は尖っていく
- それは素rで大変だから、僕らは社会を作ってきた
- 参考になる他の国を知りたい
- 相対的な日本を知りたい
- 中島さん
- フィンランドは参考になる
- 類似点として、子供の学力の点数は高井
- 違う点は、自己肯定感が高い点
- 先生と言う職業が、給料は変わらないけどとても人気の職種
- 先生という職種がもつ、「裁量権」がとても大きい
- 子供たちに答えを覚えるのではなく、問題提起のもたせるには、「先生の裁量」を増やして、そういう先生を増やしていくことがポイントにある
- 中島さん
- フィンランドの「プロジェクト型学習」が学力と両立しているのがすごい
- NYにいた経験で、逆に日本の子供がちゃんと着席しているのは褒められた光景もある
- なぜ座んなきゃいけないか、疑問を持つ子も多い
- 宮野さん
- 麹町中学校など、できる環境も日本にもあるはず
- 日本の地方の教育などもどこかでうけられるところはあるはず
「こどもの教育」と 「大人の人的資本」の共通項
教育現場ができることはなんなのか。
この議論が進む中で、「人的資本」に最終的に議論がフォーカスされていくのがとても興味深かったです。
その他、「留学」に関する見解や、教員にもっと裁量権を渡していくなどの具体的な話もでており、学びが大きかったです。
- 中島さん
- 日本は過ごしやすいからなかなか出ない
- 多様性を知るために、もっと出るのは良いと思う
- まずはオンラインなどでも、出ていくことは必要だと思う
- 村上さん
- Agreeとdisagreeの概念
- 他の人と意見が異なっている事を受け入れる概念
- それを教育現場で受け入れる概念が少ない
- 将来のグローバルリーダーになるためには、そのマインドを知る事
- 海外に留学もよいが、国内でもそのマインドを知る事から始める
- 自分と相手が違うことを、受け入れる事
- 「同調圧力」の逆の概念
- 宮野さん
- 「育人(いくじん)」の概念
- 「教育」という教えるというスタンスよりも、一人格と接するスタンスが大切である
- 先生と生徒が、一方的に教える関係ではない
- 既にある知識をアウトプットしてインスールするだけなら、IAで事足りる
- 中島さん
- 子供に必要なことが、今、大人にも求められている
- 企業の中でも「育人」の概念が大事になっている
- 求められる人材の概念も、より多角化が求められている変化はある
- 村上さん
- 「労働市場の流動性をいかに高めるか」
- 人的資本の概念で語られている
- 教育の概念と人的資本の概念が通じている
- 人材の流用性が求められている
- 大人になっても自分を変える必要性
- それが経済価値にむず美ついていく必要性がある
- サステナブルにしていくために、労働市場の流動性を高める必要がある
- 人的資本に民間企業が大きくシフトしていく意味
- 民間企業がここにシフトしていくと儲かる状況を生み出す
- 「人材」の重要性が改めて注目されている
- 人的資本に対してアクションが取れていない会社が淘汰されていく未来
- 企業の中において一番大切な資本が「人」